親の介護で退職?約4割が経験する離職・働き方変更の事実と不動産売却を前提とした「融資」という現実的な対策

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親の介護で退職?約4割が経験する離職・働き方変更の事実と不動産売却を前提とした「つなぎ融資」という現実的な対策

目次

介護離職の衝撃的な事実

総務省の調査によれば、親の介護を理由に離職または働き方を変更した人は約4割に達しています。特に50代女性では、その割合は57.9%という驚くべき数字です。

つまり、50代女性の2人に1人以上が、親の介護によってキャリアを中断、または大幅に変更せざるを得ない状況に直面しているのです。

介護離職による経済的打撃

介護離職による経済的損失は甚大です。

収入面の損失:

  • 給与収入の喪失:年収400万円なら、10年で4,000万円の損失
  • 退職金の減額:勤続年数が短くなることで数百万円の減額
  • 年金受給額の減少:厚生年金の加入期間短縮により、生涯で数百万円の損失

支出面の増加:

  • 介護費用:在宅介護で月平均5万円、施設介護で月平均15万円~30万円
  • 介護施設入居一時金:300万円~1,000万円
  • 住宅改修費:バリアフリー化で数十万円~数百万円

介護施設入居の現実:自宅売却という選択

親が要介護状態になり、施設入居が必要になった場合、多くの家族が直面する問題が「入居一時金と月額費用」です。

一般的な介護施設の費用:

  • 入居一時金:300万円~1,000万円
  • 月額費用:15万円~30万円

親の年金収入だけでは到底賄えない金額です。そのため、多くの家族が親の自宅を売却して費用を捻出するという選択をします。

自宅売却の問題点:時間がかかる

しかし、不動産の売却には時間がかかります。

一般的な売却スケジュール:

  • 不動産会社との媒介契約:1週間
  • 査定・価格設定:1~2週間
  • 買い手探し・内覧対応:1~3ヶ月
  • 売買契約・決済:1~2ヶ月
  • 合計:3~6ヶ月

一方、介護施設の入居は急を要します。「今すぐ入居したい」という状況で、「売却完了まで6ヶ月待ってください」とは言えないのです。

不動産担保ローンの現実的な活用法:「つなぎ融資」

ここで、不動産担保ローンの現実的な活用方法が不動産の売却を前提とした「つなぎ融資」です。

つなぎ融資とは?

親の自宅を売却することは決まっているが、売却完了までに数ヶ月かかる。その間の介護施設の入居一時金や初期費用を、不動産担保ローンで一時的に調達し、売却代金が入ったら一括返済する方法です。

重要な前提条件:

  • 不動産会社と媒介契約を締結している
  • 売却活動が既に開始されている
  • 売却完了までの期間が3~6ヶ月程度
  • 売却代金で融資を一括返済できる見込みがある

なぜ「つなぎ融資」なら成り立つのか?

ご指摘の通り、不動産担保ローンの金利は年12~15%と高額です。長期間借り続けると、利息負担が膨大になります。

長期利用の問題点(5年間借りた場合):

  • 融資額:1,000万円
  • 年利:12%
  • 5年間の利息合計:約300万円~400万円

これでは経済的に成り立ちません。

しかし、つなぎ融資なら短期間(3~6ヶ月):

  • 融資額:1,000万円
  • 年利:12%
  • 3ヶ月間の利息:約30万円
  • 6ヶ月間の利息:約60万円

短期間であれば、利息負担は現実的な範囲に収まります。売却代金で一括返済すれば、利息負担は最小限に抑えられるのです。

実例:つなぎ融資で介護施設入居を実現

事例1:母親の施設入居を3ヶ月のつなぎ融資で実現

50代女性のAさんは、母親(80歳)が認知症で在宅介護が困難になり、緊急で施設入居が必要になりました。入居一時金500万円が必要でしたが、手持ち資金がありません。

母親の自宅(評価額2,500万円)を売却することを決め、不動産会社と媒介契約を締結しました。しかし、買い手が見つかるまで3~4ヶ月かかる見込みです。

Aさんは母親の自宅を担保に、不動産担保ローンで500万円を調達しました。

スケジュール:

  • 1週目:不動産会社と媒介契約、不動産担保ローン申込み
  • 2週目:融資実行、施設入居一時金支払い、母親入居
  • 3ヶ月後:買い手が見つかり、売買契約
  • 4ヶ月後:決済、売却代金2,300万円入金
  • 4ヶ月後:不動産担保ローン一括返済(元本500万円+利息20万円)

結果:

  • 利息負担:20万円(4ヶ月分)
  • 母親は速やかに施設入居でき、適切な介護を受けられた
  • Aさんは介護離職を回避し、仕事を継続
  • 売却代金から返済後、1,780万円が手元に残り、今後の施設費用に充当

事例2:父親の施設入居と自宅売却で6ヶ月のつなぎ融資

50代女性のBさんは、父親(78歳)が脳梗塞で倒れ、リハビリ施設への入居が必要になりました。入居一時金300万円と、初月の費用50万円、合計350万円が必要でした。

父親の自宅(評価額1,800万円)を売却することを決め、媒介契約を締結しましたが、立地が悪く、買い手探しに時間がかかる見込みでした。

Bさんは父親の自宅を担保に、不動産担保ローンで350万円を調達しました。

スケジュール:

  • 1週目:媒介契約、不動産担保ローン申込み
  • 2週目:融資実行、施設入居
  • 6ヶ月後:買い手が見つかり、売買契約
  • 7ヶ月後:決済、売却代金1,650万円入金
  • 7ヶ月後:不動産担保ローン一括返済(元本350万円+利息36万円)

結果:

  • 利息負担:36万円(7ヶ月分)
  • 父親は速やかにリハビリ施設に入居し、機能回復に専念できた
  • Bさんは介護離職を回避
  • 売却代金から返済後、1,264万円が手元に残り、今後の施設費用に充当

事例3:売却活動中の急な資金ニーズに対応

50代女性のCさんは、母親(75歳)の在宅介護が限界に達し、施設入居を決めました。既に母親の自宅の売却活動を開始していましたが、買い手がなかなか見つからず、4ヶ月が経過していました。

その間、母親の状態が悪化し、緊急で施設入居が必要になりました。入居一時金400万円が必要でしたが、売却はまだ完了していません。

Cさんは母親の自宅を担保に、不動産担保ローンで400万円を調達しました。

スケジュール:

  • 売却活動開始から4ヶ月後:不動産担保ローン申込み
  • 2日後:融資実行、施設入居
  • さらに2ヶ月後:買い手が見つかり、売買契約
  • さらに1ヶ月後:決済、売却代金2,100万円入金
  • 同日:不動産担保ローン一括返済(元本400万円+利息12万円)

結果:

  • 利息負担:12万円(3ヶ月分)
  • 母親は状態悪化の時期に速やかに施設入居でき、命を救われた
  • 売却活動を中断することなく、継続できた

つなぎ融資活用の条件と注意点

活用できる条件

条件1:売却活動が既に開始されている 不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動が進行中であること。

条件2:売却完了までの期間が明確 買い手の目途が立っている、または売却完了までの期間が6ヶ月以内であること。

条件3:売却代金で返済できる見込み 融資額が、売却予定価格を大幅に下回っていること。

注意点

注意点1:長期利用には向かない 年利12~15%という高金利のため、長期間借り続けると利息負担が膨大になります。あくまで「つなぎ」として、短期間の利用に限定すべきです。

注意点2:売却が長引くリスク 不動産市況の悪化、物件の立地・状態の問題などで、売却が予想以上に長引くリスクがあります。その場合、利息負担が増大します。

注意点3:売却価格の下落リスク 売却を急ぐあまり、相場より安く売却してしまうリスクがあります。ただし、つなぎ融資があることで、焦って安売りする必要がなくなり、むしろ有利に売却できる可能性もあります。

注意点4:返済計画の明確化 売却代金が入金される時期を明確にし、その時点で一括返済できるよう、計画を立てる必要があります。

売却を前提とした場合のメリット:競売との比較

差し押さえや競売の場合、不動産は市場価格の50~70%で売却されてしまいます。一方、通常の売却活動では市場価格の90~95%で売却できます。

例:評価額2,000万円の不動産の場合

  • 競売:1,000万円~1,400万円
  • 通常売却:1,800万円~1,900万円
  • 差額:400万円~900万円

つなぎ融資で6ヶ月借りた場合の利息が60万円だとしても、通常売却で400万円以上高く売れれば、十分に元が取れます。

つまり、**つなぎ融資の利息負担は、時間を確保して有利に売却するための「投資」**と考えることができるのです。

まとめ:つなぎ融資という現実的な選択肢

親の介護で施設入居が必要になり、自宅を売却する場合、売却完了までの期間が問題になります。その間の入居一時金や初期費用を、不動産担保ローンの「つなぎ融資」で調達することで、以下のメリットが得られます。

メリット:

  • 親が速やかに施設入居でき、適切な介護を受けられる
  • 介護離職を回避し、仕事を継続できる
  • 売却活動に十分な時間をかけ、有利な価格で売却できる
  • 短期間(3~6ヶ月)の利用なら、利息負担は現実的な範囲(数十万円)

重要な前提条件:

  • 不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動が進行中
  • 売却完了までの期間が6ヶ月以内
  • 売却代金で融資を一括返済できる見込み

長期的な借入には向かない: 年利12~15%という高金利のため、長期間の借入には適しません。あくまで「売却までのつなぎ」として、短期間の利用に限定すべきです。

親の介護で自宅売却を検討している方、売却活動中だが入居一時金が必要な方は、不動産担保ローンの「つなぎ融資」という選択肢を検討してみてください。

時間を味方につけて、親の介護と自分のキャリア、両方を守る現実的な方法があるのです。

→ 詳しくはアライアンス公式サイトをご覧ください。

執筆者:石川 慶(行政書士・宅地建物取引士・貸金業務取扱主任者)


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