不動産担保ローンは消費者金融や無担保ローンと審査を重視するところが違います。ただし不動産を担保にして資金調達を考えたものの、審査に落ちてしまった経験はありませんか?
不動産担保ローンは、比較的高額な融資を受けやすい手段ですが、すべての申込者が通るわけではありません。「不動産担保ローンが通らない理由」とその対策について詳しく解説します。

1. 不動産担保ローンの審査基準とは?
不動産担保ローンの審査は、単に担保となる不動産の価値だけで決まるわけではなく、さまざまな要素が考慮されます。金融機関やノンバンクによってどこを重視しているかは、ぞれぞれ違いますが主な審査基準は以下の通りです。
1.1 不動産の担保の審査基準
- 不動産の価値はどうか:担保としての価値が十分でない場合、希望額の融資が受けられないことがあります。調査したら担保となる不動産の価値が低いのに、不動産の担保価値以上の融資額を希望しても通りません。
- 流動性はどうか:その不動産の売却が難しい物件、売却までに時間が相当程度かかる場合(過疎地の土地や畑、再建築不可物件、市街地調整区域や、権利上のなんらかのトラブルを抱えているなど)は評価が下がることが多いです。
- 建物の築年数:特に建物の場合、築年数が古いと、そのままでは利用できません。建物自体の担保価値は0円査定となる場合が多いです。
- 先順位の担保と枠:先順位に抵当権等の物的担保の有無とその枠を調査します。枠いっぱいの担保がベタベタ付いている場合は担保を付けても意味がありません。ただし審査基準は会社ごとに違います。
1.2 申込者の信用審査
- ブラックリスト入り:信用そのものに疑義が生じる場合、金融機関によっては不動産価値だけを見るのではなく申込者の信用も重視する場合もあります。申込者の信用情報に傷があると、融資を断られる可能性が高くなります。
- 他社からの借入状況:すでに複数の借入れがあり、その借入の延滞が多かったり長期間延滞が続いていると融資の審査が厳しくなることがあります。
- 収入の安定性:法人個人含め安定した収入がない場合、マイナス評価とされる場合もあります。ただし、不動産価値が高い場合は収入の安定性が低いのみをもってマイナス評価としない会社もあります。
- その他申込者の反社チェック:申込者の調査をして引っかかる場合、融資の審査は厳しくなります。
1.3 返済計画の妥当性の審査
貸金業法の規制では個人も法人でも過剰貸し付け禁止という大前提があります。ですので個人でも法人でも返済能力調査は必須とされています。ただし、返済能力調査した結果の判断は会社ごとに違います。
- 個人の場合(収入に対して借入額が大きすぎる):年収に対して借入希望額が三分の一を超える場合、個人だと✖です。貸すことはできません。これを総量規制といいます。ただしこのような場合でも例外があります。どのような場合が例外になるかはアライアンス株式会社へお問い合わせください。
- 個人事業主、法人の場合(事業計画の不透明さ):事業用資金として借入れる場合、事業計画が不明確だと審査が通らないことがあります。逆をいうと事業計画をしっかり作成して融資担当者に返済が可能と信じ込ませられるような場合だと可能でしょう。
2. 不動産担保ローンが通らない主な理由
2.1 個人のケースで、住んでいる居宅を担保にローンを組もうとする場合
個人のケースで居宅を担保に不動産担保ローンは組めません。
逆に個人でも複数の不動産を持っている場合やセカンドハウスを担保に不動産担保ローンは利用できます。どのようなケースがよくてどのようなケースがダメなのか詳しく知りたい場合は当社へお聞きください。
2.2担保評価額が不足している
例えば、希望融資額が5000万円であっても、不動産の評価額が3000万円しかない場合、希望額の融資を受けるのは難しくなります。
解決策
- 他の不動産を追加担保に入れる。
- 希望融資額を下げる。
- 比較的大手は審査基準が厳しいため、緩そうな中小のノンバンクをあたってみる。
2.3 信用情報に問題がある
過去にローンやクレジットカードの支払いを滞納した履歴があると、審査が厳しくなります。
解決策
- 信用情報を事前に確認し、問題があれば改善する⇨信用情報は、信用情報機関に「登録情報の開示請求」をすると確認できます。開示請求は、インターネットや郵送、窓口などで行うことができます。例えば以下の情報機関です。
- 株式会社日本信用情報機構 https://www.jicc.co.jp/kaiji 株式会社シー・アイ・シー https://www.cic.co.jp/mydata/index.html
- 過去の延滞があった場合は、完済してから時間を置いて申し込む。
2.4先順位に抵当権や根抵当等がベタベタ付いている
不動産担保余力いっぱいに先順位の抵当権や根抵当権がベタベタついている場合は審査が厳しくなります。
解決策
- 確定申告書やしっかりした事業計画書を用意して、返済能力に問題ないことをアピールする。
- 連帯保証人をつける。
- 他社へ支払っている返済表などを用意して、きちんと返済していることをアピールする。
2.5反社チェックや事件等のチェックに引っかかる
ノンバンクも何らかの反社会的勢力のチェックや事件等の調査を行っています。引っかかった場合審査は通らないでしょう。
3. 事例紹介:不動産担保ローン審査に通らなかったケースと解決策
3.1 事例① 資金繰りに困った中小企業経営者
背景 建設業を営むAさんは、急な工事案件を受注したが、資材費の支払いが迫っていたため、金融機関へ自社が保有する千葉市内の不動産担保ローンを申請した。しかし、既存の借入が多く、審査が通らなかった。
解決策
- 基本的に銀行等などの金融機関は審査が厳しいため、ノンバンクなどをあたってみる。
- 保有する追加不動産があれば追加担保を用意し、ない場合でも親族や知人の不動産を担保に融資枠を増やす。
- 事業計画を具体的に提示し、事業内で返済が可能なことをアピールする。
結果 上記の対策を講じて当社へご相談があった。金融機関より利率は高いが迅速に対応できるのと、後日金融機関への借り換えを念頭につなぎ資金として1年内の短期借入を申し込まれた。結果希望額の融資を受けることに成功し資材費に支払いに間に合った。
3.2 事例② 共有持分の不動産での借入
背景 Bさんは、東京都下の親から相続した不動産(Bさんが住んでいる居宅ではない)の持分を担保にローンを申し込んだが、銀行等の金融機関では単独名義ではないため審査が通らなかった。
解決策
- 共有持分の案件は権利関係が複雑なため、当社のような共有持分の融資を扱うノンバンクを利用したほうが良い。
結果 共有持分の評価に応じた融資を受けることができた。
4. 審査に通るためのポイント
4.1 約束や少額の支払いでもキチンと守り、事前準備を徹底する
- 何度も審査に落ちている場合、申請前に自分の信用情報がどのように記載されているかを確認する
- 過去に事故歴(破産情報や延滞情報、リスケ情報など)が残っている場合は、本人の信用だけでは厳しい場合もあるので知人や親族などの物上保証人を立てて信用を補完する。
- 少額の支払いでもキチンと延滞しないように期日を守り、自分の信用情報を高めていく。
4.2 担保価値を高める
- 築年数が浅い場合外観のペンキを塗ったり、建物周辺を掃除する。
- 土地家屋調査士を利用して境界を確定させる。
- 再建築不可物件の場合、幅4メートルの道路に2メートル以上不動産が接するように接道義務をクリアする。
- 権利の瑕疵がある場合、単独所有者になるべく持分を買いとったり、他の共有者と全員の合意を得る。
4.3 収入と返済計画を明確にする
- 安定した収入を証明できる書類を用意。(確定申告書、源泉徴収票、納税証明書その2)
- 税金を滞納していない証明書を用意。(納税証明書その1、その3など)
- 事業継続の可能性のある事業計画をきちんと練ってアピールする。
5. まとめ
不動産担保ローンが通らない原因は多岐にわたりますが、事前準備と適切な対策を講じることで、審査に通る可能性を高めることができます。特に、資金需要者の信用情報のチェック、担保価値の見直しと追加、きちんとした事業計画の作成とその事業内での返済能力の明確化が重要です。

当社では、柔軟な審査基準を設けており、最短2日での融資も可能です。「急な入り用で資金が必要だが、銀行融資が厳しい」「金利は高いものの、1年以内に返済予定の短期資金を調達したい」などをお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
執筆者:石川 慶(行政書士・宅地建物取引士・貸金業務取扱主任者)