根抵当権とは?仕組み、抵当権との違い、注意点を解説

不動産を担保にした融資の場面で「抵当権」や「根抵当権」という言葉を耳にしたことがある方も多いでしょう。特に、事業資金などの融資を受ける際には、根抵当権が設定されることがあります。では、根抵当権とは何なのか、どのような特徴があるのかを詳しく解説します。

目次

1. 根抵当権の基本概念

根抵当権とは、民法398条の2に記載されている条文です。一定の範囲内で何度でも借り入れを行うことができる抵当権のことです。通常の「抵当権」は、特定の債務に対してのみ設定されるのに対し、「根抵当権」は一定の限度額の範囲内で発生する複数の債務を担保することができます。

1.1 抵当権との違い

項目抵当権根抵当権
対象特定の債務変動する債務
複数の借入できないできる
解除債務の返済で消滅根抵当権の解約手続きが必要
債権者の変更可能(要手続き)原則不可

一般の抵当権は、特定の借入れ(例えば「3000万円の融資」)に紐づいており、その借入れが完済されると抵当権は消滅します。一方で、根抵当権は上限額の範囲内で何度でも借入れや返済が可能です。

2. 根抵当権の仕組み

2.1 設定契約

根抵当権は、債権者(金融機関など)と債務者(借り手)の間で契約を交わし、登記することで成立します。契約時には、以下のような事項が決定されます。

  • 根抵当権の極度額(担保できる最大の金額)
  • 債務の範囲(事業資金、運転資金、手形貸付など)
  • 債権者(金融機関など)
  • 債務者(法人や個人事業主など)
  • 担保となる不動産

この契約に基づき、融資の枠が設定され、必要に応じて借入れが行われます。

2.2 極度額とは

根抵当権の「極度額」とは、金融機関が担保として設定する最大限度額のことを指します。例えば、極度額が1億円と設定されている場合、その範囲内で何度でも借入れと返済が可能です。

ただし、極度額が1億円だからといって、必ずしも1億円の融資が受けられるわけではなく、金融機関の審査基準により実際の融資額が決まります。

3. 根抵当権の活用場面

3.1 事業資金の調達

企業が事業を拡大する際や、運転資金の確保のために、根抵当権を利用するケースが多くあります。融資枠を確保しておけば、資金繰りの自由度が増し、銀行との交渉もスムーズになります。

3.2 不動産担保ローン

不動産投資や土地の開発を行う際にも、根抵当権を活用することがあります。極度額の範囲内で柔軟に資金調達ができるため、不動産取引においても根抵当権が利用されています。

4. 根抵当権のリスクと注意点

4.1 過剰な借入れ

根抵当権が設定されていると、借入れが容易になるため、過剰な債務を負ってしまうリスクがあります。特に、金利負担や返済計画を十分に考慮せずに借入れを繰り返すと、債務超過に陥る可能性が高まります。

4.2 根抵当権の消滅

根抵当権は、すべての債務が完済されても自動的には消滅しません。解除するためには、債権者と協議のうえで、根抵当権の「元本確定手続き」を行う必要があります。

4.3 債権者変更の制限

根抵当権は、原則として債権者を変更することができません。そのため、融資を受ける際は将来的な資金計画も踏まえた契約が求められます。

5. まとめ

根抵当権は、一定の範囲内で繰り返し借入れが可能な担保制度であり、企業の資金調達や不動産投資などに幅広く活用されています。しかし、適切な管理を行わなければ、過剰な債務のリスクが伴うため、慎重に利用することが重要です。
融資の際に根抵当権の活用を検討される場合は、金融機関や専門家と相談しながら、最適な資金調達方法を選びましょう。

執筆者:石川 慶(行政書士・宅地建物取引士・貸金業務取扱主任者)

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